ヤマドリ

ヤマドリ
ヤマドリ
ヤマドリ 前部分(関東巻)
ヤマドリ 前部分(関東巻)
ヤマドリ 前部分(関西巻)
ヤマドリ 前部分(関西巻)

思へども 思ひもかねつ あしひきの 山鳥の尾の 長きこの夜を
作者不詳(11-2802)


いくら物思いをしても思いは尽きない。あしひきの山鳥の尾のように長いこの夜を

2802歌には注として次の歌が添えられています。

或る本の歌に曰はく
あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を 独りかも寝む

あしひきの山鳥の尾のしだれた尾のように長々とした夜を、一人で寝るのかなあ

この歌は小倉百人一首では柿本人麿の作として良く知られていますが、万葉集では作者不詳となっています。

秋の夜長は独り寝の寂しさを抱くものには耐え難い辛さを伴うものです。独り寝の辛さは万葉のむかしもそうであったように、男女の永遠のテーマで、これまで多くの嘆きが詠われています。この歌はその代表的な歌と言えます。
歌では上三句が次の「長々し夜を」に掛かる序詞として使われています。長い長いヤマドリの尾、それと同じように長い長い夜を独り寝るのだろうか、と絶望的な心の内を詠っています。

ヤマドリのオス
ヤマドリのオス KKPCW, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
ヤマドリの尾
ヤマドリの尾 Alpsdake, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons

ヤマドリはキジ科で日本固有種の留鳥です。メスは全長が約55cmほどでカラスよりも大きな体ですが、オスは尾が長いため全長が約125cmとなり、キジのように派手ではありませんが特徴のある姿をしています。しかし、ヤマドリは大変警戒心が強い鳥でなかなか人目につくことがなく野山で出会う機会は少ないようです。
また、ヤマドリの雄雌は昼間はともに寄り添うが夜は谷を隔てて寝るという言い伝えもあり、そこから「ひとり寝」の寂しさを伴うイメージも生まれました。

このようなことを踏まえると、長い長い夜をひとり寂しく恋しい人を想いながら寝る、というこの歌の、その「長い」ということの引き合いにヤマドリの尾が使われるのは、単に尾が長いからという連想だけではないことが分かります。

帯では夜に別れて過ごす雄のやまどりが雌の落ち羽に思慕を募らせる趣向となっています。

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