海松(みる)

海松
海松
海松 前部分
海松 前部分
ミル
ミル photo by 三重大学大学院 藻類学研究室 https://soruipc2.bio.mie-u.ac.jp/index.html

万葉表記:海松、美留、水松

神風の 伊勢の海の 朝凪ぎに 来寄る深海松 夕凪ぎに 来寄る俣海松 深海松の 深めしわれを 俣海松の 復行き反り 妻と言はじとか 思ほせる君
作者不詳(巻13-3301)


神風が吹く伊勢の海の、朝凪によって来る深海松、夕凪によって来る俣海松よ。深海松のように心を深めてあなたを思う私を、俣海松のようにまた帰って来て、妻と呼ぼうとは思っていないだろうか、あなたは。

「海松(みる)」とは何か?すぐ分かる人は少ないかもしれません。
平安時代には有職文様のひとつとして意匠化された海松は、実は海藻の一種で古くから食用にもされました。現代では食用藻となることは少なく知名度も低いですが、貴族の衣装のデザインにもなったくらいですから、昔は誰もが知っているポピュラーな海藻だったのでしょう。オリーブグリーンのような色をしているため「海松色」という色の名前にもなりました。「海松茶」はオリーブグリーンにグレーを混ぜたような渋い緑をいいます。松葉のような形状をしていることから「海松」とされたのだと思います。
「深海松」は海中深い岩に生えているみるをいい、「深く思う」気持ちを込めています。「俣海松」は二つに分かれ股状に伸びるみるをいい、「再びまた」の気持ちが込められています。古語では「み(見)る」という言葉自体に「逢う」という意味が含まれているため、深海松には「心を深めて逢いたい」、俣海松には「またいつかきっと逢いたい」という強い想いが隠れているように思われます。
帯ではその強い想いをみるの差し色で表現しました。山切りの地紋と地色が海の底のイメージを膨らませています。

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