月の記憶
太古から人間はお月さまと関わりのある生活を送ってきました。満ち欠けを繰り返しながらいつも身近にあるお月さま。私たちを見守ってくれる親しみのある神さまのような存在として、いつしか人々から願いや、祈りや、いろいろな想いを託され、お月さまにまつわる多くの物語や言い伝えも生まれました。
中国の伝説では、月には不老不死の霊薬を搗くウサギと蟾蜍(ガマ)が住むといいます。日本では月でウサギが餅を搗いているイメージは定着しましたが、なぜかガマは除かれました。また、同じく中国には、月には枯れることのない大きな桂の木が生えているという伝説もあり、万葉集にも秋の冴えた月光は月の桂が美しく色づいたからであろうと詠まれています。トクサ(木賊)とウサギの組み合わせは中秋の名月の暗号のようなもの。トクサは古来、紙やすりのように研磨の用途として用いられてきましたが、満月のシンボルであるウサギとともに描かれることで、磨きだしたような美しい月をイメージさせるものです。そして、秋といえばススキ、クズ、キキョウ、キクの花…。
「月の記憶」では月にゆかりのある文様たちで三日月を形づくり、お月さまへの想いを詰め込みました。
ビビッドな色をたたいた上に、さらに様々な色を重ねることで深みのある地色を染め上げています。鮮やかなブルーで染め分けた月にかかる雲をアクセントにしました。
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