橘とホトトギス
我が宿の花橘を霍公鳥来鳴き響めて本に散らしつ
大伴村上(巻8-1493)
わが家の庭の橘にホトトギスが飛んで来て、鳴く声高く響かせて花を根元に散らしたよ
ホトトギスは万葉集では156首と鳥の中では一番数多く登場します。卯の花、橘、菖蒲、藤、などの花と共に詠まれている歌が63首ありますが、橘と共に詠んだ歌が29首と飛び抜けて多いのは、ホトトギスが柑橘類につくアゲハ類の幼虫を好んで捕食するためよく目についたのではないかといわれます。
ホトトギスの聞きなしに「トッキョキョカキョク」がありますが、それと同じように「ホトトギ」と昔の人が聞きなしたことからその名がついたと言われています。また、「ホト」「トギ」と即応するように雌雄が呼びあっているようにも捉えられ、恋人を慕う想いが込められました。
また、「ホト」「トキ」「ス」から、「ほとんど時は過ぎる」すなわち「古(いにしえ)」と結びつけて詠まれたりします。
万葉びとはほととぎすの声になつかしい人を思い出し、恋人を思い浮かべたようです。
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