萩
万葉表記:芽子、芽、波疑、波義
秋萩に 置ける白露 朝な朝な 珠としそ見る 置ける白露
作者不詳(巻10-2168)
薄紅色の可愛らしい花を咲かせた萩の葉にキラキラ光る露が宿っているのを、毎朝毎朝、宝石のように見てしまうよ。たくさん宿っているのは白露なのだな
秋の野に 咲ける秋萩 秋風に なびける上に 秋の露置けり
大伴家持(巻8-1597)
秋の野に咲いている萩の花が秋風になびいて揺れている。その上には秋の露が宿ってキラキラ輝いている
萩は集中142首詠まれ、最も多く登場する植物です。
秋の七草を詠った、有名な山上憶良の旋頭歌
萩の花 尾花 葛花 なでしこが花 をみなへしまた 藤袴 朝顔が花
の冠頭を飾る花です。
秋萩が咲くと、それは間もなく訪れる冬の枯れ野の風景を心の隅に抱かせ、わびの心を感じさせます。鹿の鳴き声を聴けば、「ああ花が散るのを惜しんで鳴いているのだな」と心を痛め、雁を見ては、いよいよ急ぎ足で去りゆく秋を実感してしまう。
日が短くなるに連れて朝晩の冷え込みも増し、秋草の上にはびっしりと白露が付きます。
朝日が映る白露はまるで宝石のようにキラキラして綺麗だけれども、それは、やはり深まる秋のわびしさを感じさせます。
萩が水面近くまで垂れ、静寂漂う景色を表現しました。
コメント