なのりそ考④-なのりそ=アカモク?
私がこの「なのりそ考」を書こうと思ったのにはあるきっかけがあります。
私は植物をテーマにする作品をつくるときは必ず実際にその植物を観察するところから始めるようにしています。ホンダワラも海中で揺れている姿を肉眼でしっかり見てみたいとは思うのですが、今の自分には、それはちょっと難しい。。なのりそに関しては以前に磯辺で見た記憶を頼りに、あとはネット上のホンダワラの写真を参考にイメージをふくらませ帯の制作をしました。
自分のホームページで作品紹介をするにあたり、どうしてもホンダワラの写真が必要になったため、三重大学大学院 藻類学研究室のサイトに提供をお願いしたところ、気持ちよくご承諾くださいました。そして、担当の生物資源学研究科 准教授のK先生とのやりとりの中でたいへん衝撃的で興味深い話を聞いたのです。
-なのりそはホンダワラではなく、近縁のアカモクである可能性も高い-
K先生はその理由として
- ホンダワラは数10センチから1メートルの長さで、海面下にあるため人目にあまり触れない。
- この仲間は成熟すると、生殖器托という実のような部分に雌は卵、雄は精子を作るが、アカモクは成熟すると生殖器托が水面で黄金色に光って花のように見える。その様子を「なのりその花」と呼んだのではないかと言われている。
の二点を上げられました。
??アカモク?
アカモクは同じホンダワラ科の海藻で、最近では健康食品としても注目されています。調べてみるとアカモクもまた地方によっていろいろな呼称があり、ナノリソという呼び名はないものの、「ジンバソウ(日本海沿岸) ギンバソウ(新潟) ギバサ(秋田)」など、『本草綱目啓蒙』に上げられたホンダワラのものと同じ呼び名がありました。
気泡の形状でいうと、アカモクは細長くて先端に葉がついており、ホンダワラは丸っぽくて先端は丸いか少し尖るくらいで葉っぱはついていないという違いがあります。アカモクの葉っぱは鋸歯(葉の縁のギザギザ)の切れ込みが深くなるためホンダワラと若干の違いが見られますが、それは場所によってあるいは季節によって全然変わってしまうため分類が難しくなるということです。ホンダワラの仲間は種類が多く形も似ているものが多いので専門家でも分類が難しいため、この仲間を通称して「ホンダワラ類」と呼んでいるそうです。
こうなると、なのりそをホンダワラと断定するのは難しく、少なくとも食用価値の高いアカモクもまたなのりそと考えるべきではないでしょうか。
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