あづさ考③-「玉梓」について
「梓弓」の他に、万葉集の中で梓は「玉梓(たまづさ)」という言葉で登場します。
かくだにも我れは恋ひなむ玉梓の君が使を待ちやかねてむ
作者不詳(巻11-2548)
せめてこのようにして、恋い慕ってだけでもいよう。やがて玉梓のあなたの使いを待ちかねてしまうのだろうか
「玉梓」は「使い」「妹」にかかる枕詞です。古代、男女の逢い引きの連絡は使いの人が受け持っていたのですが、その使いが来ない。たぶん待ちぼうけになるだろうと、待つが故に苦しい心境が詠まれています。
では、なぜ「玉梓」が「使い」の枕詞として使われるのか?
万葉のころ、使者は正式な使いの目印として梓の枝(杖)を持って相手に意を伝えた。そして紙が使われだすと、そこに文や歌を付けて届けたのだそうです。「玉」は美しいものを形容する言葉。玉のような梓の枝を持った使者の訪れは心がときめくものだったのでしょう。梓がもつ霊力も、それを使者が持つ理由として大きな意味があったのだと思われます。
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