やまたちばな考①

ヤブコウジ
ヤブコウジ

やまたちばな(ヤブコウジ) ヤブコウジ科

あしひきの 山橘の 色に出でよ 語らひ継ぎて 逢ふこともあらむ
春日王 巻4-669

あしひきの山の橘のように、はっきりと態度に出してしまいなさい。便りをしあっていて、やがて逢えることもあるでしょう

「色に出でよ」は鮮やかな赤い実のように恋心を顔に表す、恋していることを外面に表すという意味。高さ20cmにも満たないような小さな植物の実にこのような想いを託しているところが面白い。

ヤブコウジは常緑で赤い実をつける小低木。古名を「やまたちばな」と言ったが柑橘種ではない。おそらく、たちばなと同じように邪を退ける霊力を持つとしてつけられた名で、平安時代頃までは辟邪のラッキーアイテムとして儀式に用いられていたようだ。
万葉集には5首に登場するが、いずれも赤い実のことが詠われている。晩秋からの寒さが増す季節、特に冬の雪の間から覗く赤い実はさぞ美しく感じられたことだろう。

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