やまたづ考②

やまたづの葉
やまたづの葉

①では枕詞「やまたづの」が「迎え」にかかる理由として、ニワトコの小葉がきれいに向かい側に対生することによるものと書いた。しかしながら、よく考えてみると同じような特徴を持つ木は「ゴンズイ」「アオダモ」「オニグルミ」など他にも多く見られ決して珍しいものではない。優れた植物への観察眼を持つ万葉人が「迎え」の枕詞としてやまたづを当てたのはなぜなのだろうか?そのヒントは次の歌から探れるかもしれない。

君が行き 日長くなりぬ 山たづね 迎へか行かむ 待ちにか待たむ
磐姫皇后(いはのひめのおほきさき) 巻2-85

あなたがおいでになってから日かずも長く経った。山路をたずねて迎えに行こうか。それとも待ちつづけていようか

この歌は万葉集巻2の最初の歌。「やまたづ考①」で取り上げた90の歌に酷似しているが作者は違う。85は磐姫皇后、90は衣通王の歌とされるが、これらは伝誦歌とされるもので、口伝えでそれらの作者が物語のように語り継がれたのだろう。
磐姫皇后の歌では「山たづね」。衣通王の歌は「やまたづの」。5文字め以外は同じ音が使われている。すなわち
「やまたづ」と言う名前が山を「たづねる」を連想させるため、葉の特徴も相まって「迎え」の枕詞となったのではないだろうか?
やまたづのように山をたづねて貴方を迎えにいく。万葉人はやまたづの葉っぱを見ては、心のどこかでこのような連想を抱いたのかもしれない。

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