生命の樹-アースガルドの光り輝くリンゴ
ギリシャ神話に登場する「ヘスペリデスの黄金のリンゴ」に似た木が北欧神話にも存在します。
北欧神話の宇宙樹といえば「ユグドラシル」が知られますが、「ユグドラシル」は枝葉を茂らせる樹木というイメージを超えた、もっと大きな、見えない概念としての母体というか、いわば地球そのものを表す樹であるように思われます。そのユグドラシルの天上界、神々の暮らすアースガルドには一本のリンゴの樹があります。美しい女神、イズンが守護するその樹には光り輝く黄金のリンゴが実り、イズンがせっせとかごに摘んだリンゴを求めて神々がイズンの庭に集まってきます。イズンのリンゴには永遠の若さを保つ力があるのです。そのため神々はいつまでも老いることはありません。
物語ではイズンが悪神ロキにだまされ巨人シャシィ(シャシィは大鷲に姿を変えることができる)にさらわれてしまい、リンゴを食べられなくなった神たちは急激に老化してしまいます。そして厄はアースガルドにとどまらずミズガルズ(人間や巨人が住む世界)にも及ぶことに。困った神々はロキにイズンを取り戻すよう命じると、ロキは鷹の羽衣を借りて飛び立ち何とかイズンの救出に成功し、大鷲になって追いかけるシャシィは待ち受けた神々によって退治されます。イズンが戻ったことにより神々は若さと力と美しさを取り戻し、アースガルドにはふたたび光と喜びが戻ってきます。
物語から見えてくる女神イズンは、不老不死のリンゴを守護することにより、「再生」「豊穣」をもたらすものであったことが分かります。
イズンの庭にある不老不死を叶える実をもつリンゴは、まさに生命の樹と呼ぶべきものであるといえます。
生命の樹-ヘスペリデスの黄金のリンゴ
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