太陽の樹・月の樹
イランの古代信仰では、天空には雨水を貯える大きな海、あるいは泉があり、そこには一本の聖なる樹「月の樹」があるとされました。さらに天空にはもう一本の聖樹「多くの種子をもつ樹」があるとされ、それはすべての植物の根源となる樹で「月の樹」に対し「太陽の樹」と考えられました。太陽のように赤くぎっしりと実の詰まった果実といえば、彼の地では柘榴に他なりません。そして、古くからイラン高原で栽培されていた重要な植物といえば葡萄です。月の樹は葡萄を指すものとされます。
古代イランの信仰で人気のあった豊穣の女神アナーヒターは葡萄を伴ってあらわされることが多くあり、また葡萄の代わりに柘榴を手にしたものもあります。葡萄と柘榴はどちらも古くからイランの人々の生活とともにあって、豊穣のシンボルとして神に捧げられた聖なる植物なのです。
参考文献 「シルクロード」林良一著
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