万葉表記:菱

君がため 浮沼の池の 菱採ると わが染めし袖 濡れにけるかも
柿本朝臣人麻呂歌集(巻7-1249)

あなたのために浮沼の池の菱の実を採ろうとして、私の染めた着物の袖を濡らしてしまいました

万葉の時代、若い女性はお洒落のために露草などの花を袖に摺りつけて色を染めました。摺り染めした色は水に濡れると落ちやすかったに違いありません。「それでも、いとわずにわたしはあなたのために菱の実を採ったのですよ」と乙女心をうったえるような歌です。

「菱」の名の由来は、実が拉(ひし)げた(押しつぶされた)形によるものといわれます。また「菱形」という言葉はこの葉の形からきているとされていますが、私は葉が並んだ幾何学的な形を連想してしまいます。

夏、白くて可愛らしい四弁の花を咲かせます。実は食べると栗のように甘くて美味しいそうです。

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