ぬばたま

ぬばたま
ぬばたま
ぬばたま 前部分
ぬばたま 前部分
ヒオウギの実
ヒオウギの実
ヒオウギの葉
ヒオウギの葉

万葉表記:奴婆珠・烏玉・烏珠・野干子・夜干玉・奴婆多麻・奴波多麻・野干玉

居明かして 君をば待たむ ぬばたまの わが黒髪に 霜は降るとも
磐姫の皇后(巻2-89)


あなたがお出でになるまで、たとえ夜が明けても、わたしは待っています。ぬばたまの実のように、黒いこの髪に夜の霜がおりようとも。

この植物は葉の元のところ(基部)が扇形に見え、それがむかし公卿が儀式の時に持った‘檜扇’に似ていることから“ヒオウギ”の名が付けられました。
万葉集の中では“ぬばたま”と呼ばれます。晩秋になると直径5mmくらいの球形で光沢のある黒色の種子が姿を現しますが、それが烏の羽のような色の玉であることから、“烏羽玉(うばたま)”となり、それが変化して“ぬばたま”となったと言われています。また、ヒオウギ自体が”ぬば(野羽)”と言われていたためその黒い種子を“ヌバタマ”と呼んだとも、“ぬば(野羽)”は黒色を表す非常に古い言葉であるとも言われています。
“ぬばたま”は
黒・夜・暗・夢・闇・夕・髪・今夜・月
などの枕詞として万葉集には80首の中に登場しますが、植物としての歌は一首もみられません。きっと万葉の時代では、その艶やかな黒く光る玉に特別な想いを抱いていたのでしょう。そして知らず知らずに植物のことは忘れ去られ、“ぬばたま”と言う枕詞だけが残ったのでしょうか。
私は‘闇’の枕詞“ぬばたま”にもう一度光を当ててあげたい。

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