桜(山桜)

万葉表記:桜、佐久良、作楽、佐案

この花の 一与のうちに 百種の 言そ隠れる おほろかにすな
藤原広嗣(巻8-1456)
この桜の一枝にはわたしのたくさんの言葉が込められています。どうか粗末にしないでください

あおによし 寧楽の京師は 咲く花の 薫ふがごとし 今盛りなり
小野老(巻3-328)
奈良の都は、桜の花が咲き乱れあざやかに照り輝くように、いまが盛りだ

見渡せば 春日の野辺に 霞立ち 咲き匂へるは 桜花かも
 作者不詳(巻10-1872)
見渡してみれば、春日の野あたりに霞がたって、咲き染めているのは桜の花だろうか

‘花’といえば‘桜’。言わずもがなのことですが日本人に最も愛される花ですね。集中47首詠まれています。
現代、もっともポピュラーなのは‘ソメイヨシノ’ですが、当時の桜は‘ヤマザクラ’をさします。透き通るような利休色や琥珀色の若葉とともに白色から淡紅白色の花を咲かせ、その絡み合う色のハーモニーには品格を感じます。清楚な女性を連想させる花です。

ある女性に桜一枝を贈り、「この一枝の中にはわたしのいろいろな思いがこもっているんだよ・・・」と詠っている藤原広嗣の歌はユニークですね。花びら一つ一つにひっそりといろいろな表情をつけて歌のイメージのきものにしました。

万葉集以外の桜を詠んだ歌をいくつか。

世の中に たえてさくらの なかりせば 春の心は のどけからまし  在原業平

願はくは 花のもとにて 春死なむ そのきさらぎの 望月の頃  西行

敷島の 大和心を 人問はば 朝日ににほふ 山桜花  本居宣長

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