松・雪

万葉表記:松、麻都、末都

わが屋戸の 君松の樹に ふる雪の 行きにはゆかじ 待ちにし待たむ
作者不詳(巻6-1041)

私の家の、あなたを待つという松の木に降る雪、その雪のように行くことはしますまい。あなたを待ちに待ちましょう

八千種の 花は移ろふ 常盤なる 松のさ枝を われは結ばな
大伴家持(巻20-4501)

さまざまに美しい花は衰えてゆきます。常緑の松の枝に永遠の願いをこめて、私はそれを結びましょう

樹木の中で日本を象徴するものといえば真っ先に‘松’があげられます。常盤木の代表であり、古来、神性霊性の宿る木とされてきました。万葉集には80首登場します。
はじめの歌は「松」に「待つ」を、「行き」に「雪」をかけたおもしろい歌です。「松」に愛する妻や君を「待」という心をかけて詠まれた歌は意外に多く、20首近くあるようです。ただの語呂合わせのようにも思われますが、松という名前の由来が「神が降りてくるのを‘待つ’木である」といわれることを考えると、万葉びとは大切な人との再会や願いごとを叶えるために、松を見ては積極的に祈ったのかもしれません。家持の歌からはそんな想いが伝わってきます。
また、雪との取り合わせで詠まれた歌が6首あるのもおもしろいですね。風雪に耐えるイメージからなのでしょうか。

COMMENT ON FACEBOOK