富貴無憂

裾には大輪の牡丹を、肩には無憂樹を配した振り袖です。

牡丹は富貴花とも呼ばれ、日本でも大変人気の花です。
「牡丹に獅子」という組み合わせがあります。能の「石橋」などによって一般に広まったもので、「百花の王」と「百獣の王」の組み合わせです。作品の中では獅子の暗示として「毛卍文(けまんもん)」を配しました。太陽の力を宿す聖獣の象徴です。
また、「牡丹に蝶」という組み合わせをご存じの方も多いと思います。これは、唐代、宮中で牡丹が満開になり、黄白の蝶が群ってきたので、それを捕えると、すべて金に化したという伝説や、荘子が夢で胡蝶となって牡丹に戯れたという故事にもとづくものです。作品では牡丹の花びらが胡蝶の化身となって舞い上がっています。

無憂樹(ムユウジュ)は仏教の三大聖樹のひとつで、インドでは「アショカ」と呼ばれています。
「仏教三大聖樹」とは、お釈迦様の生涯に関わる聖なる木々のことで、お釈迦様が「悟り」を啓かれた「天竺菩提樹(インドボダイジュ)」と呼ばれるクワ科の聖樹。お釈迦様の「入滅」に関わるフタバガキ科の聖樹「シャラの木」。そしてお釈迦様の「誕生」に関わる聖樹「ムユウジュ」です。

今から2500年以上も前のお話。お釈迦様を身篭った母上「王妃マーヤ」は、インドの程近いネパールの「藍毘尼園(ルンビーニ園)」にて暫しの休息をとるために立ち寄られました。そこで、この「無憂樹」の花と出会い、あまりの見事に咲いていたものだから、その花房を手折ろうとして右手を上げた瞬間、その脇腹からお釈迦様が生まれたといわれています。そのためインドでは瑞兆をあらわす聖なる樹霊とされ、聖木として寺院に植え、花を仏教の儀式に用います。ヒンドゥー教の中でもムユウジュは聖木とされています。今でもインドでは乙女の恋心をかなえる木、また、出産、誕生・結婚にかかわる「幸福の木」として愛好されているようです。
5~6月に芳香のある花をつけますが、花弁はなく、花弁のように見えるのは先が大きく4裂した筒状のがくで、がく筒から8本の長い雄しべが飛び出ます。若い葉は垂れ下がり、色素が薄いためか白から赤紫色をしているところがとてもユニークです。

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